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舟越桂さんの彫刻 [アート]

 彫刻家舟越桂さんのことを知ったのは、ハードカバー版「永遠の仔」を読んだ時のことです。「永遠の仔」のカバーデザインは舟越桂さんの彫刻でした。その中空に浮かぶような存在感を不思議な思いで見つめたことを、今でもよく覚えています。
 そうこうするうち、近所のカトリック教会の聖母子像が舟越桂さんの作品であると知り、彼の作品を身近に感じることができるようになりました。

 舟越桂さんの彫刻は大半が楠を素材として作られているそうです。皆さんは、楠の香りをご存じですか?そうです、いわゆる樟脳の香りです。樟脳の樟とは楠のことです。

 かといって楠の香りが、いわゆる樟脳の香りそのものというのではありません。もしそうであれば「なんか、ナフタリン臭い」ということになりかねません。

 僕自身は楠の香りを嗅ぐと、台湾のことが脳裏をよぎります。今から二十年ほど前、初めて訪れた台湾・台中の仏像職人さんを取材で訪れた時、そこには楠の香りが満ちていました。楠を主材として仏像を彫刻していたからです。
 当時、台湾には日本向けの仏像を彫刻するメーカーがたくさんありました。今では日本向けの仏像を作るメーカーの多くは中国へと移りましたが(コストの関係です)、中国でもやはり工房に入ると楠の独特の香りが満ちています。規模の大きな工房になると、巨径の楠丸太をたくさん持っているところもあります。

 舟越桂さんの彫刻は内面的です。僕にはなんだか中空を漂う、一種の存在感のない、そでいて深い印象と記憶を与えてくれる彫刻に見えます。
 
 舟越桂さんが仏像を彫刻すると、どんな仏像を彫るのでしょうか。
 きっと、深い存在の悲しみに満たされた仏像を彫ることでしょう。
 人々はその悲しみに救われるのです。

 そう思うと、彼は現代を代表する仏師であるとも言えます。
 そこには、やはり楠の香りが漂っているに違いありません。

http://funakoshi.navicross.jp

 上記は舟越桂さんのHPです。興味のある方はどうぞ。


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