本物の仏壇 4 [仏壇]
本物に対しての言葉は偽物ということになりますが、仏壇業界の中には様々な価値観があり、日本で全てが作られた仏壇こそ本物の仏壇という考え方が実はあります。
それは、伝統工芸の世界であれば、あらゆる業種で存在する考え方、価値観ということになるでしょう。
例えば石川県に九谷焼という有名な陶器(陶磁器)がありますが、陶器の場合は土をこねて成形する作業と、絵付け、色付けをする工程とがあります。では、成形する作業の単価を下げるために、国内の別の陶器産地で成形作業を行い、絵付けのみを九谷で行った場合には九谷焼と言えるのかどうか。
昨年は「産地ブランド」という地域商標が話題になった年でした。地域の特産品の名前を商標として登録できるようにする、というのが「産地ブランド」ですが、その際に材料や工程のことで議論がまきおこった産地もあったようです。その産地の一つが九谷焼です。
九谷焼の場合も、純九谷焼と準九谷焼が混在することになりますが、一括りで九谷焼と表示していまえば、消費者は純と準の区別が当然できません。産地業者は価格でおおまかな判断はできるでしょうが、消費者にはそんなことは分かるはずもありません。
しかし、消費者の大半はそこまでの厳密な区分を求めていないでしょう。日々の購買の中で、そこまで考える人はむしろ少数派の人でしょう。九谷焼という名称さえ付いていれば良い、というのがお客様の大半というのが現実でしょう。
仏壇も同様です。仏壇の場合は工程数やパーツが多く、それらの生産地や素材を一つひとつ表示することは丁寧な表示であるとは言えますが、お客様の全てにとって必用な表示であるとは言い難い面があります。
ただし、お客様の中には、製品内容の詳細にまでこだわる人がいるに違いありません。そのようなお客様にとって製品内容の表示は大切なことになります。
そこにあるのは、製品、ひいては生活の中における価値観が生み出すものでしょう。表示するかしないか、というお店のスタイルはお店の価値観ですし、その表示を見て納得するのかどうか、ということはお客様の価値観です。
ここでひとつ言えていることは、表示することに価値観を見出す仏壇店がこれまでは少なかったということです。
その上、「あそこの店は海外製品ばかり扱っている」という非難中傷が当たり前のように行われてきた業界です。
つまり「国産」であることに対して潜在的な価値観を持つ仏壇店が非常に多いにも拘わらず、現実には海外製品が非常に多く、産地表示をできない、というのが業界の現実です。
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